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Microsoft Ignite 2024 @Chicago Day 4: まとめ

こんにちは、DXソリューション営業本部 大坪です。
シカゴで行われていたMicrosoft Ignite 2024が終了しました!セッションの大半が終了した最終日前日(11/21木・アメリカ時間)の夜にはシカゴの海軍埠頭で公式のセレブレーションイベントが行われ、数千人が参加する盛大なパーティとなりました。
この記事では Microsoft Ignite 2024 で発表された様々な新製品・新機能やアナウンスを分類・整理することで、全体を振り返ることができればと思います。
Microsoft Ignite 2024 Chicago については過去のレポートもぜひご覧ください:
・Microsoft Ignite 2024 @Chicago Day 1
・Microsoft Ignite 2024 @Chicago Day 2
・Microsoft Ignite 2024 @Chicago Day 3
・Microsoft Ignite 2024 @Chicago TOPIC: 再定義されたCopilot
・Microsoft Ignite 2024 Azure Open AI の Fine-Tuning が Azure AI Foundry で 一般提供を開始しました!
・Microsoft Ignite 2024 [セッションレポート] BRK117 | Lessons from Toyota for building durable multi-agent copilots
Ignite全体を通して
基調講演でサティア・ナデラCEOによって発表されたビジョン「Building an Agentic World」が今回のIgniteに通底するテーマになっていました。
本イベントにおける発表はそのほとんどが「Copilot」「Azure AI」を軸としての関連性の中で語られた、といっても過言ではないのではないでしょうか。各製品・機能は、AIを活用していくために必要なポートフォリオの一部としてマッピングされていたように思います。それらの位置づけを整理すると、大きく4つの領域にわけて考えることができるかと思います:
1. AIが提供する機能(Copilot・Azure AI)
ビジョン「Agentic World」を実現すべく、マルチエージェントの協働を前提にエージェントを管理・開発するプラットフォームとしての各種機能が整備されました。
AI機能としては、GPT-4o以降のマルチモーダル機能によってAIへの入力に映像・画像・音声を扱うことができるようになり、実務的な面での認識能力・活用範囲が大きく広がりました。
Copilot
Copilotは基調講演で「AIを使用するためのUI」として再定義されました。


ユーザーとの窓口を担う「Copilot」、各タスク・作業に特化した機能を持つ「Copilotエージェント」、それらのオーケストレーションを管理する「Copilot Studio」という構造が示されました。
Copilotのアップデートの詳細については別記事「Microsoft Ignite 2024@Chicago TOPIC: 再定義されたCopilot」を参照ください!
Copilot エージェント
Web会議に参加しながら議事録を取ったり進行を補助してくれる「ファシリテーターエージェント」、一般的な社内事務の問合せに回答してくれる「セルフサービスエージェント」、会議中の発言をリアルタイムかつ話者の声で外国語に翻訳・発声してくれる「インタープリターエージェント」等が発表され、驚きをもって迎えられました。
各Officeアプリ向けには、テキストの感情分析、センチメント分析(ポジティブ/ネガティブ)を行ってアンケート等のテキスト配列を定量評価できる「Excelエージェント」、作成したスライドを40ヶ国語に一括翻訳できる「Power Pointエージェント」などが発表されました(Microsoftの中の人のお話では、このあたりの機能実装は日本企業からの強いリクエストに応えた面があるとのこと。ありがとうございます!)
Copilot アクション
スケジュールやトリガーを定めて、Copilotに簡単に作業を依頼できる機能です。チームメンバーへのメール送信や情報の収集・要約などがデモされました。 「Outlookの振り分けルールのように、タスクを自動化できる」と表現されています。
Azure AI
Azure AI 関連では、従来「Azure AI Studio」と呼ばれていた管理ポータルが、より開発者向けの色を強くした形に機能追加され、名前も「Azure AI Foundry」に改められました。
機能面では、マルチエージェントを前提にしたエージェント開発・管理を効率化する「AI Agent Service」や、各業界の先駆者企業が教育を行ったモデルを使用できる「業界特化モデル」の提供が発表されました。
従来からのAI検索機能「AI Search(旧Cognitive Search)」も様々なアップデートが行われ、速度や品質が改善されました。
2. AIを活かすためのデータ
「AI-Ready」なデータ活用プラットフォームとしての「Fabric」のアップデートが多く発表されました。

「Fabric Databases」はAI機能との連携を前提に開発され、「Azure AI」「Copilot」が参照するデータソースの候補として簡単に選択できます。
「Fabric AI Skill」は自然言語でのデータ問合せに対応する機能で、AIとのデータ連携に威力を発揮します。
オンプレス向けには「SQL Server 2025」も発表され、ベクトル格納が標準でサポートされたデータベースとしてRAGなどAI検索との親和性がアピールされました。
3. AIを使う組織を守るためのセキュリティ
すべての領域について重要性が語られたのが「セキュリティ」です。
近年、Microsoftに対するサイバー攻撃は増加の一途にあるとのことで(被攻撃回数は昨年比で5倍!)、セキュリティへは投資を欠かさないとのこと。その姿勢としてMicrosoftのセキュリティに関する宣言「Secure Future Initiative」が改めて紹介されました。
AI活用のセキュリティ対策機能としては、データガバナンス管理ツール「Purview」に追加された、ユーザのプロンプトや機密情報の利用状況を可視化できる「Data Security Posture Management (DSPM) for AI」や、AIが参照できるデータの露出管理を行うための「Security Exposure Management」の一般公開などが発表されました。
また「Purview」「Sentinel」「Defender」などの各コンプライアンス・セキュリティ機能には、管理業務を支援する「Security Copilot」が追加されていきます。自然言語によってインシデントやログ分析に関するアドバイスを受けられ、これによって管理者・運用者の業務負荷を下げる狙いがあるようです。
4. エッジ&ハイブリッドコンピューティング
デバイスやオンプレの製品については、ローカルでAIを高速に実行したり、ハイブリッドに分散することでインフラを効率化・信頼性を向上する意図の製品が発表されました。

Azure Local
オンプレスサーバをAzureのリソースとして管理・使用できる旧称「Azure Stack」が動作要件を緩めて「Azure Local」に改名されました。Azureの一部サービスをローカルで実行してクラウドとハイブリッドに連携できるほか、AIによる推論などをローカルで実行できるようになるようです。AI活用ではポリシーやデータ量により分析対象データがオンプレスから外に出せない場合などに有効とのこと。
ローカルで実行可能なワークロードは順次追加予定とのことです。
Copilot+ PC
Windows 10のサポート終了、Windows 11 への移行に合わせてアピールされているのが「Copilot+ PC」です。AI処理に特化したNPUを搭載し、ローカルでAIによる生成や検索を高速に実行可能にします。デスクトップ画面を常時撮影・分析してAIがアシスタントする「Recall」も、発表当時はセキュリティの懸念が指摘されたものの、制限機能を整備することでリリースに向けて調整を進めているとのこと。
Windows 365 Link
仮想デスクトップサービス「Windows 365」に接続する専用のデバイスです。機器内にデータを保持しないため、セキュリティを重視する業界向けにアピールするものと思われます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。Microsoft Ignite 2024 では非常に多くの製品・トピックが発表されましたが、すべてにおいて「AI-Ready」な環境を作り「Agentic World」を実現するという軸で捉えてみると、その内容は一貫しているように思えます。マイクロソフト製品やIT業界に限らず、今後の「AIとともにある世界」への大きな変化のビジョンを示すイベントだったのではないでしょうか。
QES Ignite参加チームは現地で感じたこの変化と熱を持ち帰り、お客様のAI活用の実現・支援に活かせればと思っています。本レポートシリーズをお読み頂きありがとうございました!
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