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【AWS re:Invent 2025】自動化から「自律(High Agency)」へ。新時代のリーダーシップとアーキテクチャ

私は初めて参加しているのですが、世界最大級のクラウドカンファレンス「re:Invent」の熱気はものすごいです。
仕事の役割上、純粋なテックエンジニアの観点というよりは、管理者、組織といった側面からの報告をメインにしたいと思っています。
私からの第一弾として、「AIエージェント時代の新しいリーダーシップとアーキテクチャ」について、現地の興奮そのままにレポートします。
特に、単なる「自動化」を超えた「High Agency(高い主体性)」というキーワードは、今後の組織やビジネスのあり方を大きく変える概念でした。
イベントの熱気と概要
本セッションの会場であるVenetianは、朝から世界中のエンジニアとビジネスリーダーで溢れかえっています。 今年のre:Inventのメインテーマの1つは間違いなく「Agentic AI(自律型AIエージェント)」です。これまでのような「人間がAIに指示を出し、AIが答える(チャットボット)」段階を超え、「AIが自ら目標を理解し、計画を立て、ツールを使って実行する」時代へのシフトが鮮明に打ち出されました。
High Agency(高い主体性)を持つ組織とシステムへ
今回のセッションで最も印象的だったのは、技術機能だけでなく、「AIエージェントを使いこなすためのリーダーシップのメンタルモデル」が語られた点です。1. 「自動化」と「エージェント」の違い
これまで私たちが取り組んできた「自動化(Automation)」と、これから取り組む「エージェント(Agentic Systems)」は明確に異なります。自動化:
決定論的。予測可能なタスクを、決められた手順(スクリプト)通りに繰り返す。誤差を減らすことが正義。
エージェント:
非決定論的。曖昧な「目標」を与えられると、状況に応じて自ら計画を立て、学習し、適応する。

AWSの説明では、エージェントを「High Agencyなチームメイト」に例えました。優秀な部下には「毎日何をするか」を細かく指示(マイクロマネジメント)しませんよね?
「戦略的な意図」と「権限(ガードレール)」を与え、あとは任せるはずです。AIに対しても同様のマネジメントが必要になります。
2. リーダーシップの4つのメンタルモデル変革
エージェントを組織に導入するには、リーダー(使用者)の思考を「管理」から「自律的な監督」へと、以下の4点でダイナミックにシフトさせる必要があります。


3. エージェントを実現する3つの技術要素
技術的なアーキテクチャの観点では、エージェントは「人体」に例えられてました。
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知能(Intelligence)= 脳
Amazon Bedrockが提供する多様なモデル群。推論、画像認識など、タスクに応じて最適なモデル(Amazon Novaや他社モデル)を選択します。-
例:Amazon Pharmacyでは処方箋処理時間を90%短縮。
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文脈(Context)= 手
単なるデータではなく、データ間の「関係性(Knowledge Graph)」や「意味(Vector DB)」、そしてツールへのアクセス権(MCP)。これがないとエージェントは「瓶の中の脳」になってしまい、行動できません。-
重要な概念:Memory(記憶)。手続き記憶、エピソード記憶(過去の失敗を覚えている)などを持たせることで、エージェントは継続的に賢くなります。
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信頼(Trust)= IDバッジ
企業で使う以上、最も重要なのが信頼です。「誰の権限で動いているか(Identity)」そして「何をしてはいけないか(Guardrails)」。-
特にAutomated Reasoning(自動推論)による検証は、ピタゴラスの定理を一つ一つ手で測って確かめるのではなく、数学的に証明するようなもの。これにより、AIの挙動に対する数学的な保証を得ることができます。
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所感・まとめ:私たちは「ソフトウェア」ではなく「エージェント」をマネジメントする
今回の発表を聞いて痛感したのは、「AIエージェントの導入は、単なるツール導入ではなく、組織論の変革である」ということです。従来のシステム開発では「仕様通りに動くこと(決定論)」を目指してきましたが、これからは「目標に向かって自律的に試行錯誤するシステム(非決定論)」を許容し、それをコントロールするためのガードレールを設計する能力が求められます。
特にAmazon Bedrock AgentCoreの登場により、エージェントの「記憶」や「アイデンティティ」といった複雑な実装がAWSのマネージドサービスとして提供されるようになったのは大きな進歩です。
これにより、私たちはいわゆる「配管工事(インフラ構築)」から解放され、「どんなビジネス課題をエージェントに解決させるか」という本質的な議論に集中できるようになると思います。
re:Invent2025は始まったばかりです。引き続き、現地の熱量をレポートしていきます!
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