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【AWS re:Invent 2025】生成AIは「チャットボットの終わり」⇒「AIエージェント」の時代へ。Amazon Bedrock新機能と自律型AI

ラスベガスで開催されたAWS re:Invent 2025。Matt Garman CEOによる発表に続き、別途行われた 「Architecting the future of applications (INV202)」 の講演は、まさにAIのフェーズが変わったことを確信させる内容でした。
これまでの「生成AI=チャットボットで業務効率化」という段階から、自律的に思考し行動する 「Agentic AI(エージェンティックAI)」 がビジネスの中核を担う時代へ。
新発表のサービスとユーザー事例を交えてレポートします。
Agentic AIがもたらす「指数関数的」な価値
これまでのAI活用(チャットボットによる質疑応答など)は「足し算の効率化(Incremental)」となり、対してAgentic AIは「指数関数的(Exponential)」な価値を生み出すようになります。
エージェントの以下の特徴により可能となります。
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非同期かつ並列実行: 人による承認は不要、複数のタスクを裏側で同時に処理できる。
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動的な意思決定: 「If-Then」の固定ルールではなく、状況に応じて「どのツールを使うか」「次に何をするか」をAIが推論(Reasoning)する。
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自己修正と学習: 実行結果を検証し、失敗したらAIが勝手に再試行する回復力(Resilience)を持つ。
この「自律性」を実際のシステムに組み込むための回答が、今回発表された Strands と Bedrock Agent Core です。
独自フレームワーク「Strands」と実行環境「Agent Core」の役割
これまで、LLMに複雑なタスクをさせるには、開発者が「記憶(Memory)」や「ツール連携」「プロンプト管理」といった "部分最適解" を自前で行う必要があり、これがPoC止まりの大きな原因でした。
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Strands は、思考のループ(計画→実行→振り返り)を抽象化し、ビジネスロジックに集中できるようにします。
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Agent Core は、そのエージェントを本番環境で安全に動かすためのガードレール(権限管理、ログ、セッション分離)をAWS基盤として提供します。

海外のユーザー事例:エージェントは既に実務を回している
印象的だったのは、PoCではなく「本番環境」でエージェントを使い倒している顧客の登壇でした。
1. Stedi (ヘルスケア): "間違っても影響が少ない"領域から始める
ヘルスケアデータの交換(クリアリングハウス)を行うStedi社のCEO、Zack Kanter氏は、「請求不備のチェック」 にエージェントを導入しました。
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リスク管理: 最初から「保険請求の否認」のような高リスクなタスク(Don't be evil)ではなく、名前のスペルミス修正のような「間違っても被害が少ない」タスク(Can't be evil)から適用。
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成果: これまで数%しか行われていなかったトラブルシューティングを、エージェントが全件自動実行。3件に1件の不要な問い合わせ(電話)を削減 しました。

2. QAD (製造業): 熟練工の「暗黙知」をエージェント化
製造業向けERPを提供するQAD社は、「調達(Procurement)」 プロセスにエージェントを導入。
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サプライチェーンの変動を監視し、在庫補充レベルの調整案を提示。
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結果として、購買担当者の作業時間を 50%削減。
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ERP移行プロジェクトにかかる期間を、数年から「数週間」に短縮する成果も上げているとのこと。
3. Pattern (eコマース): ロボットアーム × 生成AI
eコマース支援を行うPattern社、CEOのDave Wright氏が紹介したのは、物理的なロボットアームとAIを組み合わせた撮影スタジオです。
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物理撮影: 独自開発の撮影ポッド(ロボットアーム)で商品を多角度から撮影し、LoRA(追加学習モデル)を作成。
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生成: AIエージェントが、ブランドのスタイルガイドやAmazon Novaモデルを参照し、高品質な商品画像を生成。
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成果: 従来の方法に比べ、CVR(ウェブサイトの訪問者数に対して、商品購入した割合)が2%向上(eコマースにおいては驚異的な数字です)。
所感・まとめ:これは「人」のゲームになる
技術的な進化もありますが、Pattern社のDave CEOが最後に語った言葉が印象的でした。
「これは最終的には『人』のゲームになる。AIエンジニアの給与相場を見て『高い』と躊躇し、平均的な給与しか払わない企業は、平均的な人材しか採用できず、結果として取り残されるだろう」
技術(Agentic AI)は一般的なものになり、AWSのようなプラットフォームを使えば誰でも高度なエージェントを作れるようになります。だからこそ、それをどうビジネスに適用するか、いかにAIエンジニアの人材を育成し、エージェントを「使いこなすか」が、企業の生存戦略になると感じました。
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