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【AWS re:Invent 2025】「Kiro」ら3つの自律型エージェントとAmazon Nova 2【Keynote】

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はじめに

DXソリューション営業本部の三浦です。
現在、AWS re:Invent 2025が開催されているラスベガスの現地会場に参加しています。
本日、AWS CEO マット・ガーマン氏によるキーノートが行われ、会場は熱気に包まれました。

キーノートではデータベースやストレージなど多岐にわたるアップデートが発表されましたが、今年のトレンドを決定づけるのは間違いなく「AIエージェント(Agentic AI)」です。
これまでの「人間がAIを使う」フェーズから、「高度な自律エージェントに開発や運用を任せる」フェーズへのシフトが鮮明になりました。
そこで本ブログでは、数ある新発表の中からこの「AIエージェント」に関連するサービスにテーマを絞り、AWSが描く開発の未来について速報をお届けします。

1. エージェントの基盤:AIインフラと新モデル「Nova 2」

エージェントが高度な推論を行うためには、強力なコンピュートリソースと優れたモデルが必要です。

次世代チップとAI Factories

自社開発チップの最新版「AWS Trainium 3」が発表されました。前世代と比較して計算能力は4.4倍、電力効率は5倍に向上しています。さらに、顧客のデータセンター内にAWSのAIインフラを配備する「AWS AI Factories」も発表され、データの主権性を守りつつ最新のGPUやTrainiumを利用可能になります。

AWS AI Factoriesの発表スライドとCEOマット・ガーマン氏

Amazon Nova 2 ファミリー

AWS独自の基盤モデル「Amazon Nova」の次世代版となる「Nova 2」が登場しました。用途に合わせて最適化された以下のモデルがラインナップされています。

Amazon Nova 2 ファミリー(Lite, Pro, Sonic)のラインナップスライド

モデル名 特徴
Nova 2 Lite 高速・低コスト。ドキュメント処理やツール呼び出しに最適。
Nova 2 Pro 高度な推論能力を持つモデル。複雑なエージェントタスク向け。
Nova 2 Sonic リアルタイムの音声対音声(Speech-to-Speech)対話を実現。
Nova 2 Omni テキスト、画像、動画、音声を同時に入出力可能な完全マルチモーダルモデル。

2. 独自データの融合:Amazon Nova Forge

「汎用モデルでは自社の業務知識が足りない」という課題に対し、画期的なサービス「Amazon Nova Forge」が発表されました。

Amazon Nova Forgeの発表スライド。「Open Training」モデルへのアクセスを提供。

これはRAG(検索拡張)や通常のファインチューニングとは異なり、AWSが提供する事前学習のチェックポイントに対し、企業の独自データをブレンドして「事前学習の続き(Open Training)」を行うものです。

  • メリット:モデルの基礎能力(推論や言語理解)を損なうことなく、企業のドメイン知識(専門用語や社内規定)を深く学習させた独自モデル(Novella)を作成できます。
  • 事例:SonyグループはNova Forgeを採用し、コンプライアンスレビュープロセスの効率を100倍に向上させることを目指しています。

3. 統制と信頼:Bedrock Agent Coreの新機能

自律的に動くエージェントを企業導入する際の「意図から外れた行動への不安」を解消するため、ガバナンス機能が強化されました。

  • Policy in AgentCore: エージェントのアクションを自然言語で定義したポリシーに基づき、制御します(例:「1000ドル以上の返金はブロックする」など)。
    Policy in AgentCoreのスライド。自然言語でエージェントの境界線を設定。
  • AgentCore Evaluations: 正確性や有害性などの指標でエージェントの挙動を継続的にテスト・評価する機能です。
    AgentCore Evaluationsのスライド。実際の振る舞いに基づきエージェント品質を継続的に検査。

4. 開発・運用を変革する「3つのFrontier Agents」

AWSが提供する新しい自律型エージェント群「Frontier Agents」が発表されました。これらは単なる支援ツールではなく、自律性、高いスキル、そして長時間稼働(Long-running)を特徴としています。

3つのFrontier Agents(Kiro, Security Agent, DevOps Agent)の概要スライド

(1) Kiro Autonomous Agent

開発者のワークフローに並走する自律型開発エージェントです。GitHub等のリポジトリと連携し、バックグラウンドでタスクを遂行します。

  • 特徴:セッションをまたいでコンテキストを記憶し、チームのコーディング規約や過去の修正履歴を学習します。
  • 能力:例えば「15のマイクロサービスのライブラリ更新」といった複雑なタスクを依頼すると、影響範囲の特定、コード修正、テスト実行、プルリクエスト作成までを自律的に行います。
  • 実績:Amazon社内の事例では、30人の開発者が18ヶ月かかると見積もられた再構築プロジェクトを、Kiroを活用することでわずか6人で76日で完了させたとのことです。

(2) AWS Security Agent

開発ライフサイクルの初期段階(シフトレフト)からセキュリティを担保するエージェントです。

  • 機能:設計ドキュメントのレビューやコードの脆弱性スキャンを行うほか、オンデマンドでペネトレーションテスト(侵入テスト)を実行し、修正コードの提案まで行います。
  • メリット:リリースの直前ではなく、開発中に継続的にセキュリティチェックを行うことで、手戻りを防ぎます。

(3) AWS DevOps Agent

システムの運用・監視を自律的に行うエージェントです。

  • 機能:アラートが発生すると、人間が対応する前にログやメトリクスを調査し、根本原因(Root Cause)を特定します。Dynatraceなどの可観測性ツールとも連携可能です。
  • 自動化:例えば「デプロイによる設定ミス」が原因であれば、修正の提案や、再発防止のためのCI/CDガードレールの作成まで行います。

5. レガシーからの脱却:AWS Transform Custom

レガシーシステムのモダナイゼーションを支援する「AWS Transform」に、「Custom」機能が追加されました。
これにより、企業固有のフレームワークや言語であっても、自然言語で定義することで、独自のエージェントによるコード変換(例:Excel埋め込みスクリプトからPythonへ、独自言語からJavaへなど)が可能になります。

おわりに

 re:Invent 2025のキーノートを通して、AWSは各企業がそれぞれのAIを開発・運用するための「インフラ」そのものを完全に握りにきている、という強い印象を受けました。

「Kiro」のようなツールで開発スピードを上げることはもちろん重要ですが、企業としての信頼性を保つには「ガバナンス」も同等に重要になります。その点で、スピードを加速させるサービスと同時に、それを統制するためのサービス(AgentCoreのポリシーや評価機能)が出てきたことは、企業がAIエージェントを導入する上でポジティブな影響があると感じています。

 今後は、単一のAIに頼るのではなく、目的に応じてこれらエージェント群を適切に組み合わせ、最大効率を発揮させるようなアーキテクチャ設計が求められるでしょう。


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