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【技術解説】社内ファイルサーバーのデータをMicrosoft 365 Copilotへ安全に連携する「Microsoft Graph コネクタ エージェント」の解説

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1.はじめに

こんにちは!DXソリューション営業本部の土屋です。

Microsoft 365 Copilotの社内活用を進めるにあたり、多くのインフラ担当者が直面する大きな課題が、「オンプレミス環境のファイルサーバー(NAS)等に蓄積された業務情報も丸ごとAIに読み込ませ、横断的に検索・活用したい」というニーズです。

長年にわたり蓄積された重要資産やマニュアルは、セキュリティポリシーやデータ容量の都合上、社内ネットワーク(イントラネット)内から容易に移動できないケースが多々あります。しかし、強固なファイアウォールに守られたオンプレミスのデータを、クラウド上のAIへ安全に参照させるには高い技術的障壁が存在します。

インバウンド通信を許可することなく、オンプレミス資産を安全にクラウド上のAIへと橋渡しするソリューション。それが、今回解説する「Microsoft Graph コネクタ エージェント」です。

本記事では、このエージェントがデータを統合するアーキテクチャの概要から、実際の構築・運用において警戒すべき重要な留意点まで、インフラエンジニアの視点で詳しく解説します。

2.Microsoft Graph コネクタ エージェントのアーキテクチャ

Microsoft Graph コネクタ エージェントは、社内ネットワーク内に配置し、オンプレミスのデータソースからクラウド上の「Microsoft Graph」へ、安全にデータをインジェスト(取り込み)するためのソフトウェアです。

本エージェントの基本的な仕組みとセキュリティ特性は以下の通りです。
  • アウトバウンド(外向き)通信に限定された安全設計
    エージェントは社内のWindows Serverまたは仮想マシン(VM)上にインストールします。通信は常に「社内からクラウドへ(HTTPS / ポート443)」のアウトバウンド通信のみで完結します。インターネット側からのインバウンド通信を許可する必要がないため、社内の厳しいセキュリティ基準を満たしつつ導入が可能です。
  • 事前インデックス化によるデータ同期
    エージェントは、あらかじめ設定されたスケジュール(例:夜間の定期実行など)に従ってファイルサーバー内をクロールします。ファイル内のテキストやメタデータを抽出し、暗号化した上でクラウド上のMicrosoft Graph検索インデックスに同期します。

ユーザーがCopilotに対して質問を投げた際、AIはオンプレミスのサーバーへ都度リアルタイムにアクセスするのではなく、クラウド側にあらかじめ用意された「最新のインデックス(目次)」を参照します。これにより、インフラへの負荷を抑えつつ、高速なレスポンスを実現しています。

3.Synced(同期型)コネクタのメリット・デメリット

本エージェントを利用する方式は「Synced(同期型)コネクタ」に分類されます。導入にあたってトレードオフとなるメリットとデメリットは以下の通りです。

〇メリット

  • 高速なレスポンスと検索性
    データがクラウド側にインデックス化されているため、Copilotは時間を置かずに社内データを参照し、回答を出力できます。
  • 強力なセマンティック検索
    Microsoft Graph側でデータがベクトル化されるため、単なるキーワードの一致だけでなく、質問の「意図」や「文脈」を汲み取った高度なドキュメント検索が可能になります。
  • ファイル単位の権限(ACL)に連動した安全なアクセス制御
    ファイルサーバー上で各ファイルやフォルダに設定されているアクセス権(WindowsのNTFSアクセス許可など)がそのままクラウドへ同期されます。ユーザー自身が閲覧権限を持たないファイルは、Copilotの検索・回答ソースから完全に自動除外されるため、社内の情報漏洩リスクを確実に防ぎます。

×デメリット
  • リアルタイム性の制限
    定期的なスケジュールに基づいてデータをクロールする仕組みであるため、ファイルサーバー側で更新された直後の最新データがCopilotの回答に反映されるまでには、次回の同期を待つタイムラグが生じます。
  • インデックス容量の消費
    Microsoft 365のテナントごとに割り当てられている「Graph コネクタ用のインデックス枠(キャパシティ)」を消費します。数百万件規模の膨大なオブジェクトを同期する場合は、別途容量ライセンスの追加検討が必要となります。

4.構築・運用における3つの重要留意点

実際の検証および構築フェーズにおいて、設定ミスや予期せぬ挙動を招きやすい3つの重要な注意点を共有します。

①Microsoft Entra IDにおける権限設定の厳格化
エージェントがMicrosoft 365と正常に通信するためには、Microsoft Entra IDへのアプリケーション登録が不可欠です。その際、APIのアクセス許可設定(Permissions)において、以下の通り厳格な構成が求められます。

⚠️ 構成時の重要留意点
Microsoft Graph コネクタ エージェントがバックグラウンドで動作するためには、割り当てる権限の種類が「アプリケーションのアクセス許可」である必要があります。「委任済み」の権限では認証エラーとなり機能しません。
上記の設定画面において、特に確認すべきポイントは以下の3点です。
  1. 適切な権限の選択: 接続の作成やデータ同期、アクセス権(ACL)の同期に不可欠な "ExternalConnection.ReadWrite.All", "ExternalItem.ReadWrite.All", "Directory.Read.All" が過不足なく登録されていること。
  2. 「種類」列の確認: 各権限の種類が「アプリケーション」として指定されていること(※デフォルトで付与される User.Read のみ「委任済み」で問題ありません)。
  3. 管理者の同意: 権限追加後に「管理者の同意を与えます」を実行し、「状態」列に緑色のチェックマーク(承認済み)が点灯していること。

セットアップの最終段階において、テナントの全体管理者(Global Administrator)による明示的な同意が得られていない場合、エージェントからのデータプッシュはすべて拒否されるため、構築時には必ずこのステータスになっていることを確認してください。
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② アクセス制御リスト(ACL)の同期設計
ファイルサーバー上の各フォルダに設定されている「アクセス権(特定の部署のみ閲覧可能など)」は、本エージェントを通じてMicrosoft Graph側にも同期されます。 しかし、オンプレミスのActive Directoryのユーザー情報と、クラウドのMicrosoft Entra IDのID情報が正しくマッピングされていない場合、「本来閲覧できるはずのユーザーの検索結果に表示されない」、あるいは「権限のないユーザーに情報が漏洩する」といったリスクが生じます。初期検証時には、異なる権限を持つ複数のテストアカウントを用いて、アクセス制御が意図通りに機能しているか、厳格なテストを行うことが必須となります。

③ サーバー環境における .NET ランタイムの前提条件
エージェントのインストーラーを実行する前に、対象のWindows Server側に適切なバージョンの .NET Runtime(バージョン8.0等の最新LTSバージョン)がインストールされている必要があります。前提コンポーネントが不足している場合、インストーラーが正常に起動しないため注意が必要です。

5.まとめと今後の展望

本エージェントを導入し、正しくデータ連携が行われた際の、最終的な成果イメージ(Copilotの応答動作)は以下の通りです。
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このように、ユーザーがCopilotに対して質問を投げると、AIはコネクタを接続したオンプレミスサーバー内のドキュメントから自動的にデータを読み取り、適切な回答を生成します。上記の実証画面の例では、インターネット上には存在しない社内独自の「会社休日」に関するドキュメントをソースとして正確に識別し、内容を要約した上で回答の根拠(参照元タグ)を明示している様子が確認できます。

Microsoft Graph コネクタ エージェントを用いたSynced(同期)型のデータ連携は、「オンプレミス環境に格納された膨大な過去のドキュメント、社内規程、技術マニュアルを、安全かつ最高水準の検索精度でCopilotに参照させたい」というエンタープライズ用途において、極めて確実性の高い選択肢となります。

インフラの整備やセキュリティ権限の設計といった綿密な事前準備は必要ですが、正しく構成できれば、社内に眠るレガシーデータ資産の価値を最大限に引き出し、社内業務の平準化やナレッジ共有の高速化に大きく貢献します。

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