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【Microsoft Entra】オンプレミスLDAPディレクトリへの自動プロビジョニング入門 ― AD LDS連携を例に

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この記事のポイント

Microsoft Entra IDから、オンプレミスにあるLDAPディレクトリ(AD LDSなど)へユーザーを自動で作成・更新・削除する仕組みを解説します。クラウド側のIDを“正”として、社内に残るLDAP依存のアプリへユーザー情報を流し込むための構成です。全体像・前提条件・構成の流れ・つまずきやすいポイントを、公式情報をもとに整理します。

 クラウドのIDをオンプレLDAPへ:Entra ID上のユーザーを情報源に、AD LDSなどのLDAPディレクトリへアカウントを自動でプロビジョニングできます。

 鍵になるのは「ECMA Connector Host」:オンプレミスに置いたプロビジョニングエージェントと汎用LDAPコネクタが、Entraとディレクトリの橋渡しをします。

 “できないこと”を先に押さえる:Active Directory ドメインサービス(AD DS)はターゲットにできず、LDAP→Entraの逆方向やグループのプロビジョニングも対象外です。

 AD LDSはパスワードを入れられない:現状AD LDSへはパスワード付きでプロビジョニングできないため、パスワードポリシーを緩めるか、無効状態で作成する必要があります。

「Microsoft Entra ID(旧Azure AD)でユーザーを一元管理したい。でも社内には、今もLDAPでユーザー情報を引きにいく“昔ながらのアプリ”が残っている」——そんな環境は少なくありません。Active Directory ドメインサービス(AD DS)とEntra IDの同期はよく知られていますが、AD DS以外のLDAPディレクトリ(AD LDSやOpenLDAPなど)へEntra側からユーザーを流し込む方法は、意外と情報がまとまっていません。

本記事では、Microsoftが提供するオンプレミスアプリケーション プロビジョニングの仕組みを使い、Entra IDからLDAPディレクトリ(例としてAD LDS)へユーザーを自動プロビジョニングする構成を、公式ドキュメントをもとに整理します。実際に手を動かす前の“全体像の地図”としてお読みください。

前提の整理 この構成は「Entra ID → LDAPディレクトリ」への一方向のプロビジョニングです。ユーザーの“発生源”はあくまでEntra ID側で、LDAP側はその写しを受け取る側になります。逆方向(LDAP→Entra)の同期や、ディレクトリ間の双方向同期とは目的が異なる点にご注意ください。

01この構成で実現できること

このソリューションの目的は、Entra IDに割り当てたユーザーを、オンプレミスのLDAPディレクトリへ自動で反映し続けることです。Entra側でアプリにユーザーを割り当てる・割り当てを外すといった変化が起きるたびに、ディレクトリ側のオブジェクトが追加・更新・削除されます。

たとえば次のような場面で役立ちます。

 LDAP認証/属性参照に依存する社内アプリ:ユーザーの属性をLDAPから引くアプリに対し、Entra側のユーザーをディレクトリへ供給します。
 POSIXワークロード:各ユーザーに一意のUID番号などが必要なLDAPスキーマへ、属性を整えて投入します。
 退職・異動時の自動クリーンアップ:Entraでアプリのスコープから外れたユーザーを、ディレクトリ側でも削除/無効化します。
補足 本記事ではLDAPディレクトリの例としてAD LDS(Active Directory ライトウェイト ディレクトリ サービス)を使いますが、OpenLDAPをはじめとする多くのLDAPサーバーに同じ仕組みで対応できます。対応一覧は「対応するLDAPサーバー」をご覧ください。

02全体アーキテクチャ ― 4つの登場人物

仕組みを理解するうえで、登場人物を整理しておくと迷いません。クラウドからオンプレミスへ、次の順でユーザー情報が流れていきます。

1

Microsoft Entra プロビジョニング サービス(クラウド)

どのユーザーを・どの属性で送り出すかを管理する“司令塔”。アプリへのユーザー割り当てや属性マッピングはここで構成します。

2

プロビジョニング エージェント(オンプレミス)

社内に置くWindows Server上のエージェント。クラウドのプロビジョニングサービスと安全に通信し、オンプレ側の処理を仲介します。

3

ECMA Connector Host(ECMA2Host)

エージェントと同じサーバーで動くホスト。SCIMで受け取った指示を、コネクタが理解できる形に橋渡しします。https://localhost:8585/ecma2host_<コネクタ名>/scim という形のURLで接続テストを行います。

4

汎用LDAPコネクタ + ターゲットLDAPディレクトリ

Microsoft.IAM.Connector.GenericLdap.dll を使う汎用LDAPコネクタが、実際にLDAP要求を発行してAD LDSなどのディレクトリへ書き込みます。

つまり、「Entra(司令塔)→ エージェント → ECMA2Host → 汎用LDAPコネクタ → LDAPディレクトリ」という一本の経路でユーザー情報が運ばれる、と捉えると全体像がすっきりします。

03前提条件 ― オンプレミスとクラウド

オンプレミス側

 ユーザーを照会する対象となる、LDAPディレクトリ依存のアプリケーション。
 AD DS以外のターゲットディレクトリ(例:AD LDS)。ユーザーの作成・更新・削除ができること。なお、このディレクトリは「Entraへ同期する側」のディレクトリと兼用しないでください(ループの原因になります)。
 エージェントをホストするRAM 3GB以上のマシン。Windows Server 2016以降で、ターゲットディレクトリと login.microsoftonline.com などへの送信接続が必要です。
 .NET Framework 4.7.2 以上。

クラウド側

 Microsoft Entra ID P1 以上を含むテナント(EMS E3/E5でも可)。
 エージェント構成用のハイブリッドID管理者ロールと、プロビジョニング構成用のアプリケーション管理者(またはクラウドアプリケーション管理者)ロール。
 プロビジョニング対象のEntraユーザーが、ターゲットディレクトリのスキーマで必須となる属性(例:一意のUID番号)をあらかじめ保持していること。
運用上の推奨 クラウド同期用のエージェントと、オンプレアプリのプロビジョニング用エージェントは分けることが推奨されています。役割を兼用させず、用途ごとに別エージェントを用意するのが安全です。

04対応するLDAPサーバーと重要な制限事項

汎用LDAPコネクタは、ルートDSEやベンダー名・バージョン、スキーマを調べてLDAPサーバーを識別します。代表的な対応サーバーは次のとおりです(一部抜粋)。

 Microsoft AD LDS(Active Directory ライトウェイト ディレクトリ サービス)
 OpenLDAP / 389 Directory Server / Apache Directory Server
 IBM Tivoli DS / NetIQ・Novell eDirectory / Oracle Directory Server
 OpenDJ・OpenDS / RadiantOne VDS など

導入前に必ず押さえておきたいのが、「この仕組みでは“できない”こと」です。ここを理解しておくと、設計段階での手戻りを防げます。

主な制限事項
項目 内容
AD DSはターゲット不可 Entra IDからActive Directory ドメインサービス(AD DS)へのプロビジョニングはサポートされません。
逆方向は不可 LDAPからEntra IDへユーザーをプロビジョニングすることはできません(あくまでEntra→LDAPの一方向)。
グループは不可 ディレクトリへのグループおよびグループメンバーシップのプロビジョニングはサポートされません。
パスワード同期は不可 Entraユーザーのパスワードをディレクトリへプロビジョニングすることはできません。他ディレクトリでは初期ランダムパスワードの設定は可能です。
AD LDSのパスワード 現状、AD LDSへはパスワード付きでユーザーをプロビジョニングできません。後述の対処が必要です。

053つの実行プロファイル

コネクタがディレクトリとどうやり取りするかは、実行プロファイルで決まります。3種類あり、それぞれ役割が異なります。

プロファイル 役割 必須?
フル インポート ディレクトリ内の全ユーザーを読み込み、既存オブジェクトを把握する。Entraが既存ユーザーを“新規作成”ではなく“更新”できるようにするために必要。 必須
エクスポート Entra側の変更(追加・変更・削除・名前変更)をディレクトリへ書き込む。プロビジョニングの本体。 必須
差分インポート 前回以降にディレクトリ側で起きた変更だけを読み込む。ディレクトリが変更ログ機能に対応している場合のみ。 任意

構成ウィザードでは、最低限「エクスポート」と「フル インポート」の両方を有効にします。差分インポートは、ディレクトリ側が要件(例:OpenLDAPならアクセスログオーバーレイの有効化)を満たす場合にのみ使います。

06構成の流れ ― 5つのステップ

実際の構成は、大きく次の5ステップで進みます。各ステップの“勘どころ”をまとめました。

プロビジョニング エージェントの導入

Azureポータルでエンタープライズアプリケーションに「オンプレミスのECMAアプリ」を追加し、プロビジョニングを自動に設定。エージェントをダウンロード・インストールし、ハイブリッドID管理者で認証します。

ECMA2Hostの証明書を構成

ECMA2Host構成ウィザードを管理者として実行し、既定ポート8585のまま証明書を生成。自己署名証明書はSANがホスト名と一致します。有効期限を控えておきましょう。

汎用LDAPコネクタを構成

シークレットトークン(12文字以上)を発行し、拡張DLLにMicrosoft.IAM.Connector.GenericLdap.dllを指定。接続ページでホスト・ポート(LDAPSは636)・バインド方式・サービスアカウントを設定します。

オブジェクトの種類・属性・プロビジョニング解除

ターゲットオブジェクトはAD LDSならUser、アンカーはobjectGUID。Entraへ公開する属性を選び、スコープ外になったユーザーの扱い(削除など)を決めます。

接続テストと属性マッピング

ポータルのテナントURLにhttps://localhost:8585/ecma2host_<コネクタ名>/scimとシークレットトークンを入力し、接続テスト。成功後に属性マッピングを構成します。

よくある詰まりどころ テナントURLのecma2host_というプレフィックスを忘れる、Microsoft ECMA2Host サービスが起動していない、エージェント登録完了前(割り当て直後の約10分間)に接続テストして失敗する——このあたりが定番のハマりポイントです。登録を急ぎたい場合は、サーバー上の「Microsoft Entra Connect プロビジョニング エージェント」サービスを再起動すると登録を早められます。

07属性マッピングのポイント

接続テストが通ったら、Entraユーザーの属性とディレクトリの属性を対応づけます。LDAP特有の“押さえどころ”がいくつかあります。

① 識別名(DN)の組み立て

ディレクトリ内の各ユーザーには一意の識別名(DN)が必要です。式マッピングでDNを組み立てます。AD LDSへプロビジョニングする例では、次のような式を-dn-ターゲット属性に割り当てます(コンテナーのDNは自組織に合わせて変更します)。

Join("", "CN=", Word([userPrincipalName], 1, "@"), ",CN=CloudUsers,DC=*****,DC=local")

② objectClass / userPrincipalName / 無効フラグ

 objectClass:AD LDSのこの例では不要ですが、他スキーマではSplit(...)でクラスを指定するマッピングが必要な場合があります。
 userPrincipalName:直接マッピングでuserPrincipalNameへ。照合の優先順位を設定し、作成時のみ適用とします。
 無効状態の連携:AD LDSではisSoftDeletedmsDS-UserAccountDisabledへマッピングし、アカウントの有効/無効を連動させます。

③ パスワードの扱い

AD LDS以外のディレクトリではuserPasswordへ初期ランダムパスワードを設定するマッピングを追加できますが、AD LDSにはuserPasswordのマッピングはありません。この点が次章の制限につながります。

照合(マッチング)のヒント すでにユーザーが存在するディレクトリへプロビジョニングする場合は、共通する属性(mailなど)のマッピングで「この属性を使ってオブジェクトを照合する」を有効にします。これにより、既存ユーザーを重複作成せず正しく紐づけられます。

08つまずきやすいポイント

実際に構成すると、いくつか“仕様を知らないと悩む”ポイントに行き当たります。代表的なものを挙げます。

AD LDSのパスワード問題

最大の注意点がこれです。現状、AD LDSへはパスワード付きでユーザーをプロビジョニングできません。一方で、AD LDSの既定のパスワードポリシーは「パスワードのないアカウントを有効化できない」ため、そのままだとアカウント有効化の操作が拒否されてしまいます。対処は次の2択になります。

対処 内容 向いている環境
パスワードポリシーを緩和 AD LDS側のパスワードポリシーを無効化/緩和し、パスワードなしでも有効なアカウントを作れるようにする。 検証・テスト環境
無効状態でプロビジョニング ユーザーを常に無効状態で作成し、別の手段で有効化する運用にする。 本番環境

LDAPS(ポート636)でのつまずき

SSL/TLSで接続する場合、証明書の格納先ストアの誤りやCNGキーの非互換により、有効化に失敗するケースがあります。サーバー証明書の発行者・サブジェクト・拇印が、接続先ディレクトリのものと一致しているかを構成ウィザードの「グローバル」ページで確認しましょう。

サービスとログの確認

 services.mscMicrosoft ECMA2Hostサービスが起動しているか確認します。
 ECMA2Hostのイベントログは、構成ウィザードを管理者として実行した後に作成されます。
 インストールフォルダーのTroubleshootingにあるTestECMA2HostConnection.ps1で、コネクタがディレクトリを読めているか確認できます(新規ディレクトリならFalseは想定どおり)。

09まとめ

Microsoft Entra IDからオンプレミスのLDAPディレクトリへのプロビジョニングは、「Entra → エージェント → ECMA2Host → 汎用LDAPコネクタ → LDAPディレクトリ」という一本の経路でユーザー情報を運ぶ仕組みです。要点を整理すると次のとおりです。

 クラウドのIDを“正”として、AD DS以外のLDAPディレクトリへ一方向でユーザーを供給する
 必須プロファイルはフル インポートとエクスポート。差分インポートはディレクトリが対応する場合のみ
 DNの組み立て・照合属性・無効フラグの連携が属性マッピングの肝
 AD LDSはパスワードを入れられないため、ポリシー緩和(検証)か無効状態での作成(本番)で対処する

「クラウドでIDを一元管理しつつ、社内のLDAP依存アプリも活かしたい」という現実的な要件に応えられるのが、この構成の価値です。まずは検証用のAD LDS環境で一通りの流れを試し、制限事項を体感してから本番設計に進むのがおすすめです。

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本記事は Microsoft Learn「ユーザーを LDAP ディレクトリにプロビジョニングするための Microsoft Entra ID の構成」(2026年6月時点)の内容を基に、独自に整理・再構成したものです。最新かつ正確な情報は公式ドキュメントをご確認ください。

※Microsoft、Microsoft Entra、Active Directory、Azure は、米国およびその他の国における Microsoft Corporation の商標または登録商標です。その他の商標および登録商標は、それぞれの所有者に帰属します。

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