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Azure の利用料金を知ろう ―料金計算ツールで簡単!価格見積もり― 第3回

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はじめに


皆様こんにちは。システムソリューション営業本部の清水です。

過ごしやすかった秋の季節もあっという間に過ぎ、冬の寒さがもうそこまで押し寄せているのを感じますね。
今年の冬は、新型コロナにインフルエンザと、例年以上に体調に気を配る必要がありそうです。


さて、早いもので当連載も3回目となりました。

前回は Azure 価格計算ツールを用いた仮想マシン構築時の見積もり方法について紹介いたしました。
今回からの記事では、Azure のストレージサービス利用料金の見積もりについてご説明したいと思います。







Azure ストレージサービスについて


早速 Azure のストレージサービスについて見積もりを始める前に、まずは事前に知っておくべきことがございます。

一口に Azure ストレージサービスといっても、様々な種類や特徴を持ったサービスがあるため、
事前知識なしに見積もりを開始しようものなら・・・








こちらの項目を前にして、必ずや頭を抱えることになるでしょう!

・・・私の体験談です(笑)



というわけで、今回の記事では、価格見積もりの前段階として
Azure 上にどのようなストレージサービスがあるのかを簡単に確認していきましょう。






ストレージアカウントの種類について


Azure には膨大な量のストレージサービスが存在しますが、今回は代表的なサービス「ストレージアカウント」についてご紹介したいと思います。

まず最初に、ストレージアカウントについてまとめた下の表をご覧ください。



ストレージアカウントの
種類
サポートされている
サービス
サポートされている
パフォーマンスレベル
サポートされている
アクセス層
冗長性オプション
汎用 v2 BLOB, File, Queue, Table,
Disk,
Data Lake Gen2
Standard, Premium ホット、クール、アーカイブ LRS, GRS, RA-GRS, ZRS,
GZRS, RA-GZRS
汎用 v1 BLOB, File, Queue,
Table, Disk
Standard, Premium - LRS, GRS, RA-GRS
Block Blob Storage BLOB(ブロック BLOB と
追加 BLOB のみ)
Premium - LRS, ZRS
File Storage File Premium - LRS, ZRS
Blob Storage BLOB(ブロック BLOB と
追加 BLOB のみ)
Standard ホット、クール、アーカイブ LRS, GRS, RA-GRS




表左のカラムに記載した通り、ストレージアカウントには5つの種類が存在しますが、
それぞれの種類ごとにサポートされているサービスパフォーマンスレベルアクセス層冗長性オプションが異なります。

それでは、各項目について順を追って説明してきます。
若干複雑ですので、分かりにくい部分は読み飛ばしていただき、
必要な部分のみを都度参考にしていただくのがよろしいかと思います。





サービス(取り扱うデータの種類、データオブジェクトの種類、TYPE)

まず最初に、サポートされているサービスについて説明します。
表中では「サポートされているサービス」と記載しましたが、ドキュメントや場面によっては「取り扱うデータの種類」や「データオブジェクトの種類」と呼んだり、また Azure 見積もりサイト上の項目名では「TYPE」とされていたりします。
少々ややこしいですが、同じ意味合いですので適宜読み替えていきましょう。

Azure ストレージアカウントで取り扱うサービスの種類には、以下5つがございます。

  • BLOB ストレージ
  • File ストレージ
  • Table ストレージ
  • Queue ストレージ
  • (Disk ストレージ)

ストレージアカウントでは、これらすべてのデータオブジェクトに対して、世界中のどこからでも HTTP または HTTPS 経由でアクセスできます。
それでは、各データの種類について簡単に説明していきます。


BLOB ストレージ

BLOB とは Binary Large Object の略で、Azure BLOB ストレージではテキストデータやバイナリデータなどの大量の非構造化データを格納するために最適化されています。
「構造化されていない」ということは、すなわち保持できるデータの種類に制限がなく、あらゆる種類のデータファイルを格納することができるということです。
用途としては、画像や動画やドキュメント等を直接ブラウザへ配信したり、バックアップデータやログデータの格納などが適しています。
また BLOB ストレージには、「Data Lake Storage Gen2」によるビッグデータ分析のサポートも含まれています。

なおこれまで説明したものは正確には「ブロック BLOB」と呼ばれるものなのですが、実は他にも「追加 BLOB」「ページ BLOB(ディスク)」といった2種類の BLOB が存在します。
追加 BLOB は新しいブロックを最後に追加することでのみ更新可能なストレージで、ログなどの格納に向いているサービスとなります。
ページ BLOB はランダムアクセスをサポートしたストレージであり、Azure仮想マシン専用のディスクサービスである Managed Disks がリリースされるまで利用されていた従来のディスクサービスを指しています。

File ストレージ

Windows 標準のファイルサービス・プロトコルである SMB(Server Message Block) プロトコルを利用する、クラウドでのファイル共有ストレージです。
Azure仮想マシンはもちろん、SMBをサポートしているあらゆるアプリケーションからアクセスおよびマウントが可能となっております。
用途としては、オンプレミスのファイルサーバーの置換または補完や、既存アプリケーションのクラウドへのリフトアンドシフトにも適しています。
なお 2020年11月現在、SMB プロトコルだけではなく NFS プロトコルについてもプレビュー段階ではあるものの対応中とのことですので、今後ますます広範囲でのファイル共有が可能となりそうです。

Table ストレージ

アプリケーションのユーザーデータやアドレス帳、デバイス情報、サービスに必要なメタデータといった構造化データを格納するために最適化されたストレージです。
膨大なセットを格納することができ、それらに対しクエリの実行を行うこともできます。
用途としてはそのまま、NoSQL データストアとしての利用が最適です。

Queue ストレージ

ワークフロー処理や、サービスコンポーネント間の通信向けのメッセージング機能を提供するストレージです。
複数のメッセージキューを保持し、データの送受信を行います。
用途としては、主にWebサーバからバックエンドアプリケーションへ処理を渡したい時などに用いられます。

Disk ストレージ

Azure VM のためのブロックレベルのストレージボリュームです。
BLOB の項でも触れた Managed Disks と呼ばれる「管理ディスク」がこれにあたります。
ちなみに従来のディスクサービスである ページ BLOB は、unManaged Disks、すなわち「非管理ディスク」と呼ばれます。




パフォーマンスレベル

次にストレージアカウントの2つのパフォーマンスレベルについてご説明します。


Standatd パフォーマンス

Standard パフォーマンスは、パフォーマンス面で若干制約はあるものの、コスト効率に優れているのが特徴です。
また、後ほど紹介する「アクセス層」をサポートしているため、最もコスト効率の高い方法でデータの格納ができるようにカスタマイズが可能です。
大容量のデータやアクセス頻度の低いデータの格納に向いています。

Premium パフォーマンス

Premium パフォーマンスでは、高いIOPSとスループット、高速データアクセスが提供されているのが特徴です。
高速で一貫性のある応答時間を必要とするワークロードに最適です。


なお、一度作成した Standard パフォーマンスのストレージアカウントを、そのまま Premium パフォーマンスに切り替えることはできません。
Premium に切り替える場合には、新たにストレージアカウントを新規作成しデータの移行を行う必要がありますので、ストレージアカウントの設計時には注意が必要です。



 

アクセス層

つづいてアクセス層についてご説明します。
アクセス層には現在「ホット」「クール」「アーカイブ」の 3 種類があり、データのアクセス頻度によってアクセス層を指定することで、コストの削減が可能となります。


ホット層

アクセス頻度の高いデータの格納に適しています。他の層と比べてストレージコストは高いですが、その分アクセスコストが低く設定されています。

クール層

アクセスされる頻度は低いものの、少なくとも 30 日以上保管されるデータの格納に適しています。
ホット層に比べてストレージコストは低めに設定されていますが、代わりにアクセスする際のコストが若干高くなっています。 

アーカイブ層

ほとんどアクセスされず、少なくとも 180 日以上保管されるデータの格納に適しています。
ストレージコストは他層よりかなり低価格に設定されていますが、代わりにデータ取得の際に多くのコストがかかります。
またアーカイブ層は、データ取得時にコストだけでなく時間も多くかかる設計となっています。(データサイズにもよりますが最大で15時間程かかることもあるそうです)

 
 
 

冗長性オプション

最後にストレージアカウントの冗長性オプションについてご説明します。
前回の記事の中でも少々触れましたが、ストレージアカウントで取り扱う冗長性オプションはさらに種類が多くなっております。
 
冗長性オプションには、下図のように6つの種類がございます。
 
  • ローカル冗長ストレージ(LRS)
  • ゾーン冗長ストレージ(ZRS)
  • geo 冗長ストレージ(GRS)
  • 読み取りアクセス geo 冗長ストレージ(RA-GRS)
  • geo ゾーン冗長ストレージ(GZRS)
  • 読み取りアクセス geo ゾーン冗長ストレージ(RA-GZRS)
 
それぞれの特徴を簡易的に図にまとめてみました。







冗長性において基本となるのは「ローカル冗長ストレージ(LRS)」および「ゾーン冗長ストレージ(ZRS)」であり、
それらの組み合わせや読み取りの可否によってさらに4種類に派生するといったイメージを持つのが分かりやすいかと思います。
特に GZRS と RA-GZRS は最近正式リリースされた比較的新しい冗長性オプションとなりますので、
今のうちに他サービスとの違いや特徴を抑えておくと、取引先や上司から褒めてもらえるかもしれません(笑)
 
以下に、簡単に各冗長性オプションの仕組みをまとめます。

 

ローカル冗長ストレージ(LRS)

シンプルかつ低コストな冗長戦略です。保存されたデータは、保存先のプライマリリージョン内で 3 回、同期的にコピーされます。

ゾーン冗長ストレージ(ZRS)

高可用性を必要とするシナリオ向けの冗長性オプションです。保存されたデータは、プライマリリージョンの 3 つの Azure 可用性ゾーン間で同期的にコピーされます。

geo 冗長ストレージ(GRS)

リージョン障害から保護するためのリージョン間冗長戦略です。保存されたデータは、プライマリリージョン内で 3 回同期的にコピーされた後、数百キロ以上物理的に離れたセカンダリリージョンに非同期的にコピーされます。

読み取りアクセス geo 冗長ストレージ(RA-GRS)

冗長化の仕組みは GRS と同じですが、セカンダリリージョンにおいてデータへの読み取りアクセスが可能となるオプションです。

geo ゾーン冗長ストレージ(GZRS)

高可用性と最大限の持続性の両方を必要とするシナリオ向けの冗長性オプションです。 保存データは、プライマリリージョンの 3 つの Azure 可用性ゾーン間で同期的にコピーされた後、セカンダリリージョンに非同期的にコピーされます。 

読み取りアクセス geo ゾーン冗長ストレージ(RA-GZRS)

冗長化の仕組みは GZRS と同じですが、セカンダリリージョンにおいてデータへの読み取りアクセスが可能となるオプションです。


それぞれの仕組みごとに特徴や利点がありますので、万が一の事態に備えつつも、コスト面と相談して慎重に設計する必要がありますね。
さらに詳しい情報について知りたい場合には、下記公式サイトをご確認ください。
Azure Storage の冗長性 https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/common/storage-redundancy




ストレージアカウントの種類

これまでの説明をもとに、改めてそれぞれのストレージアカウントについて簡単にご説明します。

Azure ストレージアカウントには以下5つの種類が存在しています。

  • 汎用 v2
  • 汎用 v1
  • Block Blob Storage
  • File Storage
  • Blob Storage

各種類は異なる機能をサポートしており、また独自の価格モデルとなっております。
 
 

汎用 v2

BLOB, File, Queue, および Table 用の基本的なストレージアカウントです。
後述する汎用 v1 と Blob Storage アカウントのすべての機能が組み込まれた、後継にあたるアカウントです。
Azure Storage を使用するほとんどのシナリオにおいておすすめとなります。

汎用 v1

BLOB, File, Queue, および Table 用の従来のストレージアカウントです。
すべての Azure Storage サービスにアクセスできますが、汎用 v2 と比べて最新機能の利用が制限されており、またコストも若干高めになっております。
そのため特別な要件がなければ、これからアカウントを作成する場合には汎用 v2 がおすすめです。
現在もしこちらを利用中の場合には、簡単な操作で汎用 v2 アカウントへのアップグレードが可能です。

Block Blob Storage

Premium パフォーマンスレベルで、非構造化オブジェクトデータをブロック BLOB または追加 BLOB として格納することに特化したストレージアカウントです。
トランザクションレートが高く、比較的小さなオブジェクトが使用されるシナリオ、またはストレージ待ち時間が一貫して短いことが要求されるシナリオに推奨されます。

File Storage

Premium パフォーマンスの特徴を持つファイル共有向けストレージアカウントです。 
代わりにサポートされているのは File のみとなるため、BLOBやその他サービスはサポート外となります。
ただし、IOPS バーストなど、固有のパフォーマンスに特化した特性が提供されているため、
エンタープライズや高いパフォーマンスが求められる環境下でのファイル共有ストレージとして最適な選択となるでしょう。

Blob Storage

従来の BLOB 専用ストレージアカウントです。これから作成する場合には後継となる汎用 v2 アカウントを利用するのが良いでしょう。
汎用 v1 と同じく、簡単な操作で汎用 v2 アカウントへのアップグレードが可能です。


さらに詳しい情報について知りたい場合には、下記公式サイトをご確認ください。
ストレージアカウントの概要 https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/storage/common/storage-account-overview




 

まとめ


いかがでしたでしょうか。
 
今回は Azure ストレージアカウントについて、見積もりに必要な事前知識について説明をいたしました。
前回に引き続き情報量が多くなってしまいましたが、仕組みさえ分かってしまえば簡単に見積もりができるようになりますので、苦手意識を持たずに取り組んでいきましょう!
次回記事ではいよいよストレージアカウントの価格見積もり方法をご紹介しますので、更新を楽しみにお待ちいただければと思います。
 
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
 
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※このブログで参照されている、Microsoft、Windows、Microsoft Azure、その他のマイクロソフト製品およびサービスは、米国およびその他の国におけるマイクロソフトの商標または登録商標です。
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