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AWS Kiroが「仕様駆動開発(SDD)」で切り開くAI開発の確実性~バイブコーディングと何が違うの?~

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はじめに

こんにちは。DXソリューション営業本部の松浦です。
今回はKiroで採用されている仕様駆動開発(Spec-Driven Development = SDD)に着目して、
従来のバイブコーディングによるAIコーディングと何が違うのかをご説明します!

1. Kiroとは:仕様駆動開発を実現するAIエディタ

AWS Kiroは、Amazon Web Services (AWS) が提供する次世代のAIエディタ、および統合開発環境(IDE)です。
AIコーディングに慣れた開発者ほど、「曖昧なバイブコーディングで本当に本番レベルの品質が出せるのか?」という課題が発生します。
これに対し、Kiroは「仕様駆動開発(Spec-Driven Development, SDD)」を用いることでエンジニアが意図した通りのコーディングを行うことを支援します。

KiroはVisual Studio Code (VS Code) を基盤としており、多くのユーザーに馴染み深い環境を維持しつつ高度なAI機能を活用することができます。

Kiroの主要な開発モード

Kiroには、開発目的に応じて主に2つのモードがあります。
以下のSpecモードこそがKiroの大きな特徴であり、Kiroの思想を最もよく表しています。

  • Specモード (仕様駆動開発): 本番利用を想定した確実な機能開発。詳細な仕様書を生成・管理し、それに基づいて実装します。
  • Vibeモード (プロンプト駆動開発): 従来のAIコーディング。アイデアの試作やプロトタイピング。AIと自由に対話し、即座にコードを生成します。

2. 仕様駆動開発(SDD)とは:設計意図と実装の結合

仕様駆動開発(Spec-Driven Development, SDD)は、「設計をじっくり行い、設計が完了するまでは実装しない」という原則に基づいています。AIを活用した開発プロセスにおいて、品質と一貫性を保証するための新しいアプローチです。

SDDは、従来の開発が「コードが唯一の真実」と考えがちだったのに対し、「仕様書が唯一の真実(Single Source of Truth)」であるというパラダイムシフトを提唱します。

SDDの核となるプロセス(Kiro Specモード)

Kiroでは、自然言語の要件を以下の構造化された仕様ファイルに落とし込みます。

  1. 要件定義 (Requirements): ユーザーからのプロンプトを基に、具体的なユーザーストーリーや受け入れ基準を含むrequirements.mdをAIが生成。
  2. 設計 (Design): 要件定義を基に、アーキテクチャ判断、技術スタックなどの青写真となるdesign.mdを生成。
  3. タスク分解 (Tasks): 設計を具体的な粒度の細かい開発タスクに分解し、tasks.mdを作成。

人間がこれらの仕様をレビュー・承認した後、AIがタスクに基づいてコードを生成します。
AIは、チャット履歴ではなく、これらの構造化されたファイル群をコンテキストとして利用するため、大規模で複雑なプロジェクトでも安定した品質と一貫性を保つことができます。

3. 従来の限界:プロンプト駆動開発(バイブコーディング)との決定的な差

KiroがSpecモード(仕様駆動開発)を推奨する最大の理由は、従来のプロンプト駆動開発(バイブコーディング)が本番開発にもたらす多くの課題を解決できるからです。

バイブコーディング(KiroではVibeモード)はプロトタイピングには向きますが、「なんとなく」の指示でAIにコードを生成させるため、以下のような問題が頻発します。

  • コンテキストの欠如: 複雑なプロジェクトルールや既存のコードベース全体を考慮できず、一貫性のないコードが生成される。
  • 「物忘れ」と手戻り: 長い対話によりAIが指示を忘れ、意図しない出力や大幅な修正作業(手戻り)が発生する。
  • ドキュメントの不在: 開発経緯がプロンプト履歴に埋もれ、保守性の高いドキュメントが残らない。

SDD vs. バイブコーディング 優位性比較

要素 仕様駆動開発(SDD, Kiro Specモード)の優位性 プロンプト駆動開発(バイブコーディング)の課題
開発の信頼性 実装前にレビューで合意形成。意図通りの機能を確実に出力。 曖昧な指示に依存し、意図しない機能や仕様外のコードが混入しやすい。
コンテキスト管理 構造化された仕様書がコンテキスト。AIは常に最新の全体像を参照できる。 チャット履歴がコンテキスト。すぐに上限に達し、一貫性を失う。
手戻りコスト 問題の早期発見(レビュー時)により、手戻りコストが最小。 実装完了後に問題が発覚することが多く、手戻りコストが最大。
成果物 コードと詳細な仕様書が同時に完成し、保守性が極めて高い。 動くコードのみが成果物になりがちで、属人化しやすい。


Vibeモードでの画面例


↑ Vibeモードでの操作例。初期命令時/コード生成後にプロンプト上でコードを修正。長期化するとごちゃごちゃになりがち。

Specモードでの画面例




↑ Specモードでの操作例。コードの生成前に、意図した通りのコードが出力されるように要件定義/設計を実施。

4. AIとIDEの関連性の遷移:監督者としてのエンジニア

SDD、特にKiroの登場によりAIとIDE(統合開発環境)の関係が根本から変わります。
これに伴い、エンジニアの立ち位置もこれまでと異なってきます。

SDD (Kiro) による新しい関係:AIは「主役」のプロセス管理者

KiroのSpecモードは、AIを単なるコード補完ツールから開発プロセス全体を主導するエージェントへと昇格させました。


↑ 設計した内容を元にタスクベースでのコード生成

  • AI (Kiro): 要件定義から設計、タスク分解まで、開発の上流工程を担う「アーキテクト」兼「プロジェクト管理者」としての役割。
  • IDE (Kiro): AIが生成した仕様書とコードを人間がレビュー、編集、承認するための「協業プラットフォーム」としての役割。

この遷移により、IDEの役割はAIとエンジニアとの協業プラットフォームとして、
そしてエンジニアの役割は、「コードを書く人」から「AIが生成した仕様とコードを的確にレビューし、プロジェクトの方向性を決定する『監督者』」へと変化します。

まとめ

AWS Kiroは、単なる「コード生成ツール」ではなく、仕様駆動開発(SDD)という新しい開発パラダイムを体現するIDEです。
SDDは、従来のプロンプト駆動開発(バイブコーディング)が抱えるコンテキスト管理の限界や仕様とコードの乖離といった課題を解決し、品質と生産性を両立させます。「なんとなく」作る開発から、「明確に定義して」作る開発へ。これがKiroを使う最大の「大義」です。

興味のある方は、ぜひAWS Skill Builderのコースもチェックしてみてください。
Kiro Getting Started (日本語)

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