記事公開日
【Microsoft Ignite 2025】Copilot StudioとMCPで構築するマルチエージェントシステム:接続からオーケストレーションへ

はじめに
DXソリューション営業本部の中根です。
Microsoft Ignite 2025にて、Copilot Studioに関する重要なセッション「Building Multi-Agent systems with MCP and Copilot Studio」が行われました。
これまでのAI開発では、システムごとに個別の「ブリッジ」を作成する必要がありました。今回のセッションでは、オープン標準である MCP (Model Context Protocol) をフルサポートすることで、Copilot Studioが「あらゆるツールやエージェントがつながるハブ」へと進化したことが発表されています。
Copilot Studio 新機能
本記事では、新機能を「Connect(接続)」「Orchestrate(協調)」「Extend(拡張)」の3つの柱で解説します。
1.【Connect】MCPサーバー導入の3ステップ:Setup, Streamline, Share
Copilot StudioにおけるMCPサポートは、単につなぐだけでなく、運用と共有までを見据えた**「Setup」「Streamline」「Share」の3ステップで構成されています。また、その裏側ではPower Platformの技術**がフル活用されています。
Setup:Power Platformコネクタによる「ゼロ・コンフィギュレーション」
従来、外部APIへの接続には複雑な定義ファイルや認証設定が必要でしたが、これが劇的に簡素化されました。
-
Power Platformコネクタの自動生成: サーバー名とURLを入力するだけで、バックエンドで自動的にPower Platformのカスタムコネクタが生成されます。これにより、既存のセキュリティ設定やDLP(データ損失防止)ポリシーがそのまま継承されます。
-
Dynamic OAuth 2.0: 面倒な認証設定も動的にサポートされ、文字通り「ゼロ・コンフィギュレーション(設定不要)」での接続を実現しました。

Streamline:ツールの選別と最適化
接続したサーバー内のすべての機能を無条件に許可するのではなく、エージェントに利用させる機能を管理者が細かく制御(合理化)できます。
-
Selective Tool Integration: MCPサーバーに含まれるツール(例:「メール送信」「メール受信」など)の一覧が表示され、トグルスイッチで個別にON/OFFが可能です。
-
Troubleshooting: エラー診断機能も統合されており、どのツールがどう動いているかを把握しやすくなっています。

Share:カタログによる共有と再利用
設定・最適化したMCPサーバーは、組織内で「コネクタ」としてカタログに公開・共有できます。 公開されたコネクタはCopilot Studio内のカタログに並び、他のエージェント作成者は選ぶだけですぐに利用可能です。
2.【Ecosystem】40以上のビルトインMCPサーバー
「自分でサーバーを作る」だけでなく、すでに用意されたカタログから選ぶだけですぐに利用可能です。 セッションでは、40以上のMCPサーバーが標準で利用可能であることが紹介されました。monday.com、Salesforce、GitHub、Zendeskなどが並びます。
また、これらはエンタープライズグレードのセキュリティ(認証、VNETなど)で保護されており、企業が安心して導入できる設計になっています。
3.【Orchestrate】クロスプラットフォーム・オーケストレーション
単に「Copilot Studio内でエージェントを作る」だけでなく、異なるプラットフォームで作られたエージェントを、Copilot Studio上で統合・管理できる「マルチエージェント・オーケストレーション」機能が強化されました。
あらゆるエージェントの「親」になる
Copilot Studioの「親エージェント」は、以下のプラットフォームで作成されたエージェントを「子」として呼び出し、タスクを委任できます。
-
Azure AI Foundry Agents
-
Microsoft 365 Copilot SDK
-
Microsoft Fabric Data Agents
これにより、データ分析はFabricのエージェントに、高度なLLM処理はFoundryのエージェントに任せるといった、適材適所のチーム編成が可能になります。
4.【Extend】プロトコルの使い分けと「Agents as MCP」
作成したエージェントを外部に公開する際、Microsoftは用途に応じたプロトコルの使い分けを提唱しています。
接続オプションの整理:MCP vs Activity Protocol
セッションでは、エージェント接続におけるプロトコルの適材適所が解説されました。
-
MCP: エージェントに「ツール(機能)」を提供する場合、またはエージェントを「ツール」として公開する場合に最適。
-
Activity Protocol: 「人間とエージェント」の対話(TeamsやWebチャット)や、既存のBot Frameworkベースの通信に最適。
【最大の新機能】Agents as MCP (Private Preview)
セッションの最後に発表されたのが、「Copilot Studioのエージェント自体をMCPエンドポイントとして公開する」機能です。
これにより、Copilot Studioで作成したエージェントが、「MCP Client」というチャネルを通じて、VS Codeや他のAIアシスタントから「ひとつの便利なツール」として呼び出せるようになります。 「一度作れば、どこでも使える (Build once, use everywhere)」が実現します。
セッションのリンク
本セッションの詳細は以下の公式サイトをご確認ください。
https://ignite.microsoft.com/en-US/sessions/BRK317
さいごに
今回のMicrosoft Ignite 2025のセッションで、Copilot Studioが進化を遂げたことが明らかになりました。
その上で MCP が Power Platform のコネクタとしてDLPで制御できるのは、ガバナンス策定案件を進める上でとても助かります。
また、「Agents as MCP」は、AI開発の効率を根本から変える可能性を秘めており、今後のプレビュー展開が非常に楽しみです。(ダメ元でプライベートプレビューに申し込み中)
QES では Power Platform の開発支援、QAサポート、開発者教育、ガバナンス整備など、組織で Power Platform を活用するためのサポートを包括的にご提供しています。Power Platform 活用についてご興味がある/利用中だが課題を感じていらっしゃるお客様はまずはお気軽にお問い合わせください。
このブログで参照されている、Microsoft、Windows、その他のマイクロソフト製品およびサービスは、米国およびその他の国におけるマイクロソフトの商標または登録商標です。

