記事公開日
【PADファイル監視】オンプレミスデータゲートウェイあり/なし比較

はじめに
こんにちは!DXソリューション営業本部の二瓶です。
Power Automate デスクトップフロー(通称 Power Automate Desktop, 以下「PAD」)を活用した業務自動化(RPA)に取り組む中で、多くの企業が直面する共通の課題があります。それは、「社内のファイルサーバーの特定のフォルダに、ファイルが置かれた瞬間をトリガーにして、自動処理を開始したい」というニーズです。
例えば、
・取引先から受領した請求書PDFが「請求書」フォルダに置かれたら、PADが内容を読み取り、会計システムに入力する。
・基幹システムからエクスポートされたCSVファイルが「日次売上」フォルダに保存されたら、PADがそれをExcelで集計し、関係者にメールで送付する。
こうした自動化を実現するには、PADに「ファイルが来たこと」を知らせる仕組み、すなわち「ファイル監視」の機能が必要です。しかし、Power Automateにはクラウドフローとデスクトップフローがあり、ファイルサーバーは多くの場合、社内ネットワーク(オンプレミス)に存在します。
この「クラウド」と「オンプレミス」の壁をどう乗り越えるかが、設計の鍵となります。
本記事では、PADでファイルサーバーを監視するための主要な2つのアプローチである、
「オンプレミスデータゲートウェイを利用する方法」と「ゲートウェイを利用しない方法」
について、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
Power Automate デスクトップフローとオンプレミスデータゲートウェイとは
Power Automate デスクトップフロー
そもそもPower Automate デスクトップフローとは何か簡単にまとめると、
・Microsoft社が無償で提供するローコードツールの1つ(ただし、クラウド連携などの高度な機能には有償ライセンスが必要)
・タスクやプロセスの自動化を簡単に作成可能
・デスクトップ上でのマウスクリックやキーボード入力などのアクションを録画し、自動的に再生可能
・データの抽出や変換、データベースへのアクセスなど、さまざまな操作を行うことも可能
デスクトップ上でのルーティン作業の効率化や生産性の向上を簡単に図ることができるツールが
Power Automate デスクトップフローです!
クラウドベースのPower Automateとの違いなど、詳しく知りたい方は下記のブログをご参照ください!
オンプレミスデータゲートウェイ
オンプレミスデータゲートウェイは何か一言で言うと、「クラウドと社内のオンプレミス環境を安全につなぐための架け橋」となるソフトです。
これをご自身のPCなどにインストールすることで、以下の連携が可能になります。
・クラウドからの指示で、社内PCのロボット(PAD)を起動する
・社内サーバーにあるデータを、クラウドへ安全に転送する
詳しい仕組みやシステム要件については、下記のMicrosoft公式サイトをご参照ください!
・オンプレミスデータゲートウェイとは | Microsoft Learn
・オンプレミス データ ゲートウェイをインストールする | Microsoft Learn
方法①オンプレミスデータゲートウェイを利用する(王道パターン)
まずは、Microsoftが推奨する最も「王道」とも言える構成です。
オンプレミスデータゲートウェイを導入し、クラウドフローをトリガーにする方法です。
実装内容
Power Automateクラウドフローで「ファイルシステム」コネクタの「ファイルが作成されたとき(プロパティのみ)」トリガーを使用します。ここで検知したファイル情報を引数として渡し、「デスクトップ用Power Automateで構築したフローを実行する」アクションでPADを起動します。
メリット
・即時性が高い
→ファイルが置かれたらほぼリアルタイム(数秒~数分のラグが含まれる場合がある)に、クラウド側が検知してフローを起動します。無駄な待ち時間がなく、実行開始~反映までの対応速度が速いです。
・マシンリソースの効率化
→ファイルが来るまでは、PC(ロボット)は何もしていませんので、別のフローを実行していても構いません。ファイルが来た時だけ呼び出されるため、1台のPCで複数の業務を効率よく回すことができます。
・管理しやすい
→Microsoftが提供する正式な連携機能であり、エラーハンドリングや実行ログの管理がクラウド側で一元管理できます。
デメリット
・コストがかかる
→この構成を実現するためには、Power Platformの有償ライセンスが必須です。特に無人実行(PCがロックされた状態での実行)を行う場合は、追加でプロセスライセンスが必要となり、コストがかさみます。
・常に稼働している必要がある
→ゲートウェイがインストールされているサーバーまたはPCがオフラインになると、クラウドとオンプレミスの接続が途絶え、トリガーが機能しなくなります。
方法②ゲートウェイを利用しない(PAD完結パターン)
ライセンスコストを抑えたいという場合に選択されるのが、ゲートウェイを利用しない方法です。
実装内容
この方法では、クラウドフロー(「ファイルシステム」アクション)を一切使用しません。代わりに、PAD自身がフロー内に「監視ループ」のロジックを組み込み、ファイル監視の役割を担います。
PADの「ファイル待機」アクションを使用するか、ループ処理の中で「フォルダ内のファイル取得」アクションを使用して、一定時間ごとにファイルサーバーのフォルダにアクセスして新しいファイルが見つかるまでグルグル回し続ける実装が一般的です。
なお、このフロー自体の起動は自動化されないため、「ユーザーが毎朝手動で実行ボタンを押して待機させる」あるいは「Windowsのタスクスケジューラー等でフローを開始させる」といった運用上の工夫が必要になります。
メリット
・追加コストが不要
→特別なインフラを用意せず、PADだけで実装ができます。
・設定がシンプル
→ゲートウェイ設定が不要なため、導入のハードルが低いです。
デメリット
・マシンのリソースを占有する
→ファイルが来るのを待っている間、PADのフローは「実行中」の状態です。つまり、その間ロボットは他の仕事ができません。「いつ来るか分からないファイル」のために、PC1台がずっと待機状態になるのはリソースの無駄遣いになりがちです。
・タイムアウトとエラーハンドリング
→いつまで実行を行うか、エラーが起こったときはどうするかといった例外処理をフロー内に細かく作り込む必要があります。
比較
ここまで解説した要素を表にまとめました。
| 比較項目 | ゲートウェイ「あり」 | ゲートウェイ「なし」 |
| 即時性 | ◎(ほぼリアルタイム) | △(設定による) |
| リソース効率 | ◎(実行時のみ占有) | ×(待機中もPCを占有) |
| 構築難易度 | △(ゲートウェイ設定が必要) | 〇(複雑な設定はない) |
| エラー管理 | ◎(クラウド側の履歴で管理可能) | △(フローで作り込みが必要) |
| コスト感 | △(有償ライセンス・構成により追加ライセンスが必要) | ◎(既存ライセンスで可) |
番外編:そもそも「ファイルをクラウド化」する選択肢
ここまでは社内サーバー(オンプレミス)」を前提にお話ししましたが、もし業務フローの抜本的な見直しが可能であれば、「ファイルの保存先をSharePointやOneDriveなどのクラウドストレージに変更する」という第3の選択肢もおすすめです。
保存先がクラウドであれば、ゲートウェイ不要で、かつリアルタイムにクラウドフローを起動(トリガー)することができます。「オンプレミスの壁」を技術で乗り越えるのではなく、「壁そのものを無くしてしまう」アプローチも、DX推進の大きな一歩となります。
まとめ
PADでファイルサーバーを監視する方法2種類をご紹介しました。
「ゲートウェイ利用」は、コスト設定のハードルは高いものの、即時性と安定性に優れた王道の構成です。
一方、「ゲートウェイを利用しない(PAD完結)」は、低コストで手軽に始められる反面、安定性や即時性は「作りこみ」と「運用」でカバーする必要があります。
ご自身の「予算」「自動化の重要度」を考慮して、最適な方式を選択することが大切です。
本記事が、自動化のヒントになれば幸いです!
QESではPower Platform導入時の支援から、アプリケーション開発、導入後の保守サポートまで対応しています。
以下のリンクからご提供しているサービスの詳細をご確認いただけます。
このブログで参照されている、Microsoft、Power Automate、Power Automate Desktop、その他のマイクロソフト製品およびサービスは、米国およびその他の国におけるマイクロソフトの商標または登録商標です。


