公開事例 某損害保険関連会社様
Redshift Spectrumを活用したデータ分析基盤のモダナイゼーションと運用高度化
エグゼクティブサマリー
日本の損害保険業界をデータ面から支える損害保険関連会社A様は、自動車走行データの分析基盤としてAmazon Redshift Serverlessを利用していましたが、将来のデータ急増を見据えた「コスト効率の最適化」と、バッチ処理等における「運用負荷の軽減」が急務となっていました。
AWSセレクトティアサービスパートナーである株式会社QUICK E-Solutions(QES)は、AWSのベストプラクティスに従い、「データライフサイクルに応じた階層化」を軸としたモダナイゼーションを提案。Amazon Redshift SpectrumとAmazon S3を組み合わせることで、データの直接参照(Direct Query)を可能にしました。
このアーキテクチャ刷新により、将来のデータ増大に耐えうる柔軟な拡張性を獲得し、ETL運用負荷を大幅に軽減。さらに、S3 Intelligent-Tieringの活用により、アクセス頻度に応じたストレージコストの自動最適化が実現し、高い費用対効果(ROI)を達成しました。
お客様について
損害保険関連会社A様は、日本の損害保険業界において、データ面から市場の安定と発展を支える中核的な役割を担っています。
主な事業内容とデータ基盤の役割
業界規模のデータ収集と各種指標の算出
- 各保険会社から提供される大規模な契約・事故データを集約し、損害保険ビジネスの基準となる各種指標や統計データの算出を行っています。
損害調査およびリスク研究に関わるデータ処理
- 自然災害等のリスクに関する調査研究や、保険金支払いに紐づく審査・調査業務など、社会の「安心・安全」を守るための広範なデータ処理業務を担っています。
同社は、上記事業の中で、「自動車走行データ」の処理・分析を行っており、スケーラブルで強固なデータウェアハウス(DWH)基盤の維持を推進しています。
お客様の課題
損害保険関連会社A様は、従来の自動車走行データの分析環境の運用において以下の課題に直面していました。
なぜAWS(Redshift Spectrum)なのか
これらの課題を根本から解決するため、同社はAWSのストレージ階層化の仕組みを活用し、「Redshift Spectrum」を軸としたデータ分析基盤のモダナイゼーションを選択しました。
アクセス頻度に応じたストレージの階層化
利用頻度の低い過去データをAmazon S3へ退避し、S3 Intelligent-Tieringを活用することで、アクセスパターンに応じてストレージコストを自動的に最適化できるアーキテクチャを実現します。
データ移動の最小化(Direct Queryの実現)
【Before】分析対象の全データを定期的にRedshiftへロード(COPY)する必要がありました。
【After】S3上のデータに対し、Spectrumを用いて直接SQLクエリを実行できるため、日々のデータロード作業が不要になり、ETLパイプラインの運用負荷を劇的に削減できます。
強固なセキュリティとコンプライアンス要件への適合
AWS IAMによる細やかなロール制御により、Spectrum実行用と運用用の権限を明確に分離でき、金融・保険分野に求められる厳格なセキュリティ要件をAWSネイティブの機能で満たすことができます。
なぜQESを選んだのか
損害保険関連会社A様がQESを本プロジェクトのインテグレーションパートナーとして選択した理由は、AWSに関する技術力とプロジェクト推進力にあります。
Infrastructure as Code(IaC)の高度な技術力
既存のAWS CloudFormationテンプレートの改修・更新を含めた詳細設計を遂行し、複雑なVPCネットワークやIAMポリシーをコードベース(IaC)でセキュアかつ確実に実装・展開できる技術力が評価されました。
データフローと運用に対する深い理解と提案力
単なるインフラ構築にとどまらず、実際の業務に沿った「データ受領→前処理→S3退避→カタログ化→分析」という一連のデータフローを再定義。本番環境で適用可能な運用手順の確立をリードしました。
計画的な導入と確実なテスト支援
綿密な運用計画書・テスト計画書を作成し、事前の検証を通じて新しいアーキテクチャの優位性を実証する、安全かつ確実なプロジェクト推進体制を提供しました。
パートナー・ソリューション
QESは、既存のDWH環境にストレージ階層化と直接参照の仕組みを導入し、スケーラビリティと運用高度化を実現するため、以下の構成を設計・構築しました。
使用したAWSサービス
| AWSサービス | 用途・ソリューション |
|---|---|
| Amazon Redshift Serverless | 当年度分のデータロードおよび一次処理領域(RPUの自動スケーリングによるコンピュート最適化) |
| Amazon Redshift Spectrum | S3上のParquetデータに対するDirect Queryの実行(データ移動不要の分析) |
| Amazon S3 (S3 Intelligent-Tiering) | 内部データの退避先および、自動階層化を活用したストレージ基盤 |
| AWS Glue (Crawler / Data Catalog) | S3上のスキーマ自動登録、および外部テーブル(メタデータ)管理 |
| AWS IAM | RedshiftからS3/Glueへのセキュアなアクセス制御(最小権限の原則) |
| AWS CloudFormation | パラメータシートに基づく、複数環境のインフラ自動構築と横展開(IaC) |
アーキテクチャの特徴

QESの設計により、同社のDWH環境は、データの「処理」と「蓄積・分析」を完全に分離したハイブリッドな構成へと進化しました。
- 処理領域の切り離しとパフォーマンスの最大化: 受領した当年度データ(CSV等)に対する複雑な前処理は、コンピュートリソースを動的に割り当て可能なRedshift Serverless上で実行した方がパフォーマンスが高いため、一時的な処理領域としてCOPYコマンドでロードします。
- 高効率なデータ退避: 前処理後、データは高圧縮なParquet形式でS3へUNLOADされ、不要になったRedshift内のデータはTRUNCATEで削除されます。
- シームレスな分析実行: Glue Data Catalogで管理されたS3上のデータに対し、過年度データを含めた全サマライズ処理をSpectrumで直接実行します。
実装のポイント
Spectrumに最適化されたデータ構造(Parquetとパーティショニング)
S3へ退避するデータを列指向フォーマットであるParquet形式に変換することで、Spectrumによるクエリ時のスキャンデータ量を大幅に削減し、クエリパフォーマンスの向上と処理コストの最適化を両立しました。また、運用要件に合わせたパーティション戦略を適用しています。
セキュアな閉域網接続とアクセス制御
既存VPCにおけるエンドポイントやルートテーブルの設定を活かし、安全な閉域網接続を確立しています。さらに、Redshift Serverlessのみが引き受けられる信頼ポリシーを持つIAMロールを作成し、S3とGlueへのアクセス権限を必要最小限に絞り込みました。
運用の自動化を見据えた設計
AWS Glue Crawlerの実行手法を整理し、将来的なS3へのアンロード時におけるクローラーの自動実行(イベント駆動)を見据えた拡張性のある設計を行いました。
成果
QESによる本プロジェクトは、AWSのベストプラクティスに従いアーキテクチャを刷新したことで、以下の定量・定性的な成果を達成しました。
1. 柔軟でスケーラブルなデータ分析基盤の獲得
ストレージ階層とコンピュート領域を明確に分離し、データの実体をAmazon S3に配置したことで、将来的なデータ急増に対しても容量の制限を気にすることなく、柔軟に拡張できるデータ分析基盤を獲得しました。
2. データ移動の排除による運用負荷の劇的な軽減
データの「UNLOAD」と「TRUNCATE(内部削除)」を運用フローに組み込み、Spectrumによる直接参照へ移行したことで、日々の長時間のETL(データロード)作業や容量監視の運用負荷が劇的に改善されました。
3. S3 Intelligent-Tiering活用による大幅なコスト最適化(高いROI)
アクセス頻度の低い過去データをS3 Intelligent-Tieringで管理することで保管コストを自動的に削減し、インフラコストの最適化を実現しました。初期投資を短期間で回収できる高い費用対効果を証明しました。
4. IaCによる複数環境への迅速かつ安全な横展開
詳細なパラメータシートとCloudFormationを活用して環境をコード化(IaC)したことで、開発環境から本番環境、さらには関連する複数環境への展開を迅速かつミスなく実行できるようになりました。
5. 細やかな権限分離によるセキュリティ要件の適合
VPCエンドポイントによるプライベート接続と、IAMを活用した最小権限の原則(Least Privilege)を徹底したことで、金融・保険関連データを取り扱う上で不可欠な強固なセキュリティ制御が実装されました。
QESについて
日経グループのデジタル事業を担う、金融ITのプロフェッショナル集団
私たちは、日本経済新聞社グループの一員として、グループのデジタル事業推進を担っています。
日本を代表する金融情報ベンダーであるQUICKの基幹システムを長年支えてきた、日経グループNo.1のITプロフェッショナル集団です。
その揺るぎない使命感と豊富な経験を礎に、お客様にとって最適かつ確実なソリューションの実現に貢献します。
AWSクラウドソリューション
2014年よりAWS認定パートナーとして、金融システムで培った高い信頼性とセキュリティノウハウを活かしたクラウドサービスを提供しています。
お問い合わせ
本事例に関するお問い合わせや、AWSを活用したシステム構築についてのご相談は、QESまでお気軽にお問い合わせください。
株式会社QUICK E-Solutions
Webサイト: https://www.qes.co.jp/
本事例は2026年2月~5月(予定)に実施されたプロジェクトに基づいています。
記載されている会社名、製品名は各社の商標または登録商標です。
